泥棒の家を訪ねる(1)
さて、家が荒らされ物がすべて盗まれた二日後。
なんと、警察は自分の担当の事件以外は他の警察はしないそうで、私たちのこの泥棒事件を結果作ってしまったような警察なりたての警部は、秋休みのため、5日間不在。
つまり、5日間は警察は何もしない事がわかりました。
もう、黙っていはいない私たちは、街のみんなに言われた通り、特に大切な物について写真をつけてポスターを貼り出してみました。
「Money Reward」
物を見つけたら報酬を上げるよっていう内容で、町中に貼り出しました。
ポスターの他に、盗まれた300点あまりの商品を髪に書き出した物をコピーし人々に渡し始めました。
その日の夜。あれよあれよと運ばれてくる盗まれた私たちの物。
「指輪あるかもよ」
「これでいくら?」
「これも盗まれたやつ?」
私たちの旅行用の大きなバックパックにいっぱいつめられた盗まれた洋服や化粧品、ゴルフクラブとか、釣り竿の下半分だけとか。次々に届く私たちのもの。
終いには、全く違う人の物まで次々に届く始末。
「スピーカーもあるけど」
「このゲーム機はそう?」
そうこうしているうちに、「この指輪20ドルもらえるならいいってお兄ちゃんに言われたけど、30ドルもらったから、オレ10ドルゲットだ!」と喜んで帰る子供たち。
泥棒にお金を振りまくその嫌さに、心が重くて重くて。
だって、『さぁ、盗んでください!お金、あげますよ』って教えているような物だもの。
この時点で、警察が別件の酔っぱらいの対処で行った家でうちの壊れたパソコンを見つけ、
写真のほとんどを入れていたポータブルのHDが10ドルで戻ってきて、娘のいままでの写真はだいたいある事がわかり、
二人で話し合った結果、やっぱり、盗まれた物をお金で買うのはおかしいという結論になってこの一日のみをもって、お金を払うのをやめにしました。
次の日、新しいポスターを作って、その理由と内容を書き、
昨日の夜売りにきた兄弟の家に直接紙を持って行ってみる事にしました。
一応、レイプが多いこの街で、私一人で行くのはとても勇気がいるので、つなぎのスノーパンツを履いて、携帯電話を持ち、紙を持って出かけて行きました。
すると、昨日、物をたくさん持ってきて、70ドルくらい稼いだ男の子にばったり会うと、
「あんたの物、あるとこ知ってるよ、ついてくる?」といって、彼の家に入る事ができました。
地下室に行ってみると、そこは窓も電気もない真っ暗な部屋。カビのにおいと、汚れた服が山ほど積まれた部屋。その中をかき分けて行くと、飲み干したワインやビールの瓶。日本のラーメン。私のコーヒー。娘の大好きな村には売っていないコーンフレーク。靴下にソフトクーラー。ショッピングバックにとあれよあれよと集まる私の物。その子のいとこ(名前はキーウィートン)が使っている部屋で、出てきた大量の物を一時持ち帰りました。
そして、そのキーウィートン一家は、トラブルメーカーの兄弟児で有名な家。
おばあちゃんの家に、孫たちがすんでいる状態なんだけれども、そのおばあちゃんの息子は(子供たちの父親)女の人を作って出て行ってしまい、嫁は行くところもなく、その息子方のおばあちゃんのいえに一緒に居候している状況。母は(その居候している嫁)酔っぱらいでどうにもならず、子供の面倒もちゃんと見切れていない。子供は7人か8人いて、みんなが、さっきのいとこの家やこの家を行き来して泊まっているのかな。
そこの家の7歳息子は、うちの主人が大好きで、お腹がすけば食べる物がないと言ってうちに入り浸っている始末。
他の息子は学校で大暴れして、警察沙汰になり、責任者つまり母が学校に行かないと戻れない停学状態。結局、母親がそれに対応せず、「学校になんて行かなくてもいい!」なんて言っているもんだから、2ヶ月もその息子は道ばたでうろうろして過ごしていた事があった。
その家に、そこの17歳の息子がどうやら家に泥棒に入ったと聞いたと言って向かってみました。
初めに対応してくれたのは、なんとその噂の母親。
盗まれた物をキーウィートンの部屋でみた事、ここに物がないか、リストを持ってきた事などをはなしていると、「あ、私はその息子の母親です。」なんて自己紹介して、料理していたソーセージをお皿に載せて奥に引っ込んでしまう始末。
おばあちゃんは、「うちの孫はやっていないと言ってる」「うちには盗んだ物はない」などなど15分くらい言っていたけれど、「私が、彼の部屋にいって(これまたなぜか違ういとこの家の地下にある部屋)ビールの瓶をみたんです」と引き下がらずに言っていると、
おばあちゃん;「キーウィートン!!ちょっときなさい!!」
と孫を呼ぶ始末。
私はまさかこの家に居るなんて思わないから、驚いていると、ふてくされた痩せて背の低い男の子が出てくる。
私;「あんたの部屋でいろいろ盗まれた物をみたんだけど」
彼;「あれは、ケルシーが持ってきた物だ」
私;「じゃぁ、なんでたくさんの人が、あなたが私の物を売ろうとしてたって言ってるの?」
彼;「ケルシーが取ったんだよ。オレは、最初の盗みに入って、ただ、ココアを取っただけだ。ケルシーの物はどこにあるか知らない。一昨日に、おじさんと街に行って売りに行ったはずだ」
おばあちゃん;「ほら、ココアしか取ってないでしょ、ケルシーが悪玉なんだ。彼が街にくると悪い事ばかりおこる。彼がやったんだよ。もう、物も売りに街へ一昨日行ったんじゃないか。うちには何もないよ。」
私;「最初の盗みには行ったんだったら、アルコールも一緒に盗まれたはずだよ」
彼;「あ〜酒もとった。。。よ。でも、他は知らない。」
もう、あきれて物が言えない、ばかばかしい会話。
親もおばあちゃんも、謝る事もしない。うちの息子はケルシーにだまされたんだとでも言いたいかのように。「物を探してあげなさい」なんておばあちゃんも言ってるし。
私は、はらわたを押さえて、どうやったら協力的な態度に家族がなるか考えながら、言葉を選んで、
本当なら、「じゃ、そのお酒代、250ドル返せ!」と叫びたいところを、「娘の大切な写真も、私の結婚指輪も、日本から持ってきた電子辞書もすべてなくなってしまった。どうしても、探したい、助けてほしい」と言ってみました。
怒りで怒りで、涙も出てきてしまったけれど、殴ったっておこったって、盗まれた物は帰ってこない。
この家族に、親に、責任を求めても、そんな物はとっくに崩れてしまっている。
どうしたらいいのか。何が彼ら泥棒犯にとっていい教育になるのか。
未だ眠れないほど、安心感を失ってしまったこの街での暮らしと、この街にそれでもまだ居るからこそできるはずの自分の道を探って、主人と二人、もう、疲れきった頭で一生懸命考えたのでした。
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